あの夏、一番静かな海 北野武監督 1991年

高知県 大岐の浜
高知県 大岐の浜
久石譲「sailent love]  「あの夏一番静かな海」

2007年12月3日

「あの夏一番静かな海」を見ました。
海の思い出の夏をすごしたせいか、10数年ぶりに無性にこの北野映画をみたくなりました。
聾唖のカップル・・茂と貴子の物悲しいラブ・ストーリー。
主人公二人が聾唖と言うこともあって、とても静かな映画です。
ゴミ収集車の仕事をしている茂は海岸の収集所に捨てられた壊れたサーフ・ボードを見つけ、家に持ち帰り、修理します。
恋人の貴子と毎週、海に出かけサーフィンの練習に励む風景が淡々と流れてゆきます。
会社仲間やサーファーたちは、最初は茶化したり、遠巻きにからかったり・・・でもだんだん二人の一途な姿に知らず知らず引き込まれ、親しくなってゆきます。
定点カメラのようなアングル、何度も繰り返されるサーフ・ボード゛を抱えてひたすら歩くシーン・・・
風景と静寂と海の蒼さが二人の心を通り過ぎてゆきます。
サーファーとしてデビューする茂を貴子は静かに見守り続けます。
映像は言葉のないコミュニケーションを美しく描いていますが、二人の内面を語るのは久石譲のリリックな音楽と随所に入るサイレントな間です。このあたりは小津安二郎の影響かな、と思いました。
真木蔵人も大島弘子も聾唖の男女を見事に演じています。
そして突然訪れる別れ・・・茂はサーフボードを残して海の向こうに消え、「死」を暗示するシーンが続きます。一年後、貴子は仲間たちと茂の遺品となったサーフボードとともに再び思い出の海へ。
貴子とサーフィン仲間や仕事仲間に残された記憶・・・が打ち寄せる波のように蘇ります。
それまで、バイオレンスばかり描いてきた北野監督がはじめて叙情作品に取り組んだ映画でもあります。公開当時は、あまりヒットもせずブルーリボン賞を取った割には話題にもならなかった作品ですが北野・久石コンビの初めての出会いとなったようです。
音楽と映像のコラボ、そして静かな海とその青さがいつまでも心に残ります。
「ベルリン天使の詩」と並んでわたしが好きな映画です。音楽的、あまりにも音楽的な映画と言えるかも知れません。

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