賢者の石とコリン・ウィルソン

2007年10月9日

自分の病気に苦しむのと、それを苦しまずに冷静に語れるのと、そのどちらが病的か。誤解されるのと、誤解が消滅するのと、そのどちらにより強い人間的紐帯を信じることができるか。一口にいってしまえば、アウトサイダーの真実は敗北することによってしか、残らぬのではないか」。
犯罪者にもならず、告白者にもならず、ひたすらアウトサイダーであろうとすること。それは本書に登場するすべての異才や奇才たちにとっても容易ではなかった。むしろ、今日の社会はこのようなアウトサイダーの失敗を少なめにして、かえって小さな犯罪と小さな告白をふやしすぎたようにおもわれる。』
これは、コリン・ウィルソンの「アウトサイダー」のあとがきに福田恒在が評論を加えたものです。SF作家にして、文芸評論家、心理学者にして、犯罪学者とも言えるウィルソンは、26歳にして処女作「アウトサイダー」で注目されます。
その後、「オカルト」「至高体験」などを書いて、自らの新実存主義の立場を明らかにします。現在の精神世界・・・スピリチュアルの発端に位置する文人と言えるでしょう。
アウト・サイダーの末尾はG.Iグルジェフの「覚醒の哲学」で終わっていますが、続くオカルトはマダム・ブラヴァッキーの神智学で始まっています。そして、「至高体験」ではマズローの人間性心理学にスポットを当てます。面白いのは、ウィルソンは決してオカルト信奉者ではないというところです。彼は、イギリスの作家らしくユーモアとウィットに富んでいるのですが、オカルティストを心理学的に捉えているのです。
これは、グルジェフの高弟・・・P.Dウスペンスキーにも言える事でしょう。ウィルソンは青春時代に、ロンドン現れたオカルティスト・・ウスペンスキーの講義に通っていたのでした。彼が、好んだ素材は多岐に渡りますが、オカルト・心理学・犯罪・SF・文学など人間の想像力に関わる分野であったことは共通しているようです。
彼は、人間のイマジネーションは未だ発掘され尽くされていない無尽蔵の資源と考えていたようです。
想像力を単に文学・アートという小部屋に閉じ込めていた時代に、一撃を与えたのが「アウトサイダー」という処女作であったということなのでしょう。
このテーマを深めたSF小説が名著「賢者の石」と言われています。
最近、サイエンスが進みすぎて不人気のSFですが「賢者の石」は一読の価値あり、不朽の名作と思っています。

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