2009年7月17日
はい、どっと・こむばんは(=^o^=)やまねこです。
四国アントロポゾフィー・クライス主催の『リューダー・ヤッヘンス医学博士の連続講座』の広報に 奔走しています。
一般層には、アントロポゾフィー医学(シュタイナー医学)というと聞きなれない と思いますが、統合医療・ホメオパシー医療・全体医療など様々な側面から注目されているルドルフ シュタイナーの人智学=アントロポゾフィーと言う世界観に基づいた医学と実践体系を指しています。
ドイツ国内ではすでに80年の伝統がありますから、ヨーロッパでは深く根付いています。また、 アントロポゾフィー医療は、近年注目されるホリスティック医学の源流という側面もありますが、 シュタイナーは現代医療を否定するものではなく、より全体的な視野から、現代医療を補完・発展 させるものであると述べています。
さてさて、まずステップ1としてシュタイナー医学のもっとも分かりやすいテキストを紹介してお きましょう。
『医学は霊学から何を得ることができるか』ルドルフ・シュタイナー著 中村政明訳 (水声社)
わたしたちの身体は、神殿であり、「神々の叡智の結集」であるとよく言われます。 漠然と『人体は宇宙だ。』などとイメージしているのですが、外科的な解剖学や西洋医学に親しん でいるわたしたちは、その「宇宙の鏡としての人体の不思議」をつぶさに理解できているわけでは ありません。 本書は、近年注目されつつある『アントロポゾフィー医学』の基本をシュタイナー自身が医療従事者に語った基本講義の訳出です。
わたしたちの外科医学的な理解・・神経系・循環器系・消化器系・代謝系などの区分理解と異な る霊的人間観に基づく「内なる人間の医学」が語られています。
シュタイナーによればわたしたち人間は、人体を基盤として神経系・リズム系・代謝四肢系の三つ に分かれ神経系は自我と思考に対応し、リズム系はアストラル体と感情に、代謝四肢系はエーテル 体と意志に対応しているのだそうです。 そして、それぞれの器官は相互に浸透しあいながら、構築プロセスと崩壊プロセスを繰り返しなが ら、健康を維持しているということらしい。興味深いのは、それぞれの系が、補完的な役割を果た していて、人間が魂的・霊的な部分を持てるのは、人体が崩壊プロセス(死への方向性)を持ってい るからこそ、魂的・霊的部分が成長する余地を得ているのだというところです。 また、病気は、その構築プロセスと破壊プロセスの均衡が崩れたときに起きるメタモルフォーゼな のだ、とアントロポゾフィー医学では捉えているようです。
注目すべき病理理解の例がいくつか出てきます。 腎臓の疾患は、人体内の「感覚器官」としての腎臓の働きが弱まった例であり、崩壊プロセスとし ての排泄・循環作用に偏ったことによるというのです。 腎臓病は構築力の弱体化に起因しているので、それを補うためにはスギナのよる治療が必要とのこ と。漢方医学でもよく用いられる薬湯です。また、逆の傾向・・・構築力が過度な時はシダが用い られるそうです。消化不良の病気の場合は、自我の働きが充分に機能していないことが要因だそう です。自我の働きを助けるためには胆嚢の炭素作用に働きかけるのが好ましく、この場合はチッコ リーが用いられるとのこと。 このあたりは、ホメオパシーに詳しい人には興味深い指摘です。 また、シュタイナーはアントロポゾフィー医学は現代の一般の医学を否定するものではなく、より 広い立場から補完するものであることを繰り返し述べていますから、「あれかこれか」と迷うのは 杞憂かもしれません。
わたしたちは誰しも、可能であれば出来る限り健康でありたいと願います。 しかし、アントロポゾフィーでは病気もまた人間にとって必要な認識のプロセスなのだと考えてい るようです。
『病気になったり、身体が衰弱することは思考する存在になるためにはどうしても必要なことなの です。病気とは霊的発達の影の側面であり、影を正しく理解するためには光にも眼を向けなければ なりません。すなわち、霊的プロセスの本質に眼をむけなければならないのです。』 とシュタイナーは語ります。
日本ではシュタイナーの人智学と言えば、『シュタイナー教育』や『霊的世界観』に眼を向けてし まいがちですが、アントロポゾフィーの実践的部分は、医学と言う極めて現実的・実際的な現場で も広く根付き息づいている「実践知」なのでしょう。
本書をきっかけとして日々の身体生活をあらためて見つめなおしてみるのもいいかもしれません。 宇宙の鏡としての人体は、わたしたちの生活を根底で支えてくれる神殿なのでしょうから・・・。』 とても読みやすいテキストですから、ご興味の方には是非お勧めしたい一冊です。