2008年3月4日
今日は久しぶりにシュタイナーのテキスト読書会に行ってきました。
ここ2年半くらいシュタイナーの学習会に参加しています。もともとわたしが、シュタイナーに出会ったのは、学生時代ですでに28年くらい前のことになりますが、わたしにとっては尽きない叡智の泉のようなもの、あるいは試金石のようなものになっています。この思想は仏教理解を深める上でも良きガイドの役 割を果たしてくれています。
さて、この会の講師のTさんは、若き神秘学者シュタイナーを髣髴とさせるような人ですが、数年間ドイツに遊学してシュツットガルトのシュタイナー関係の司祭学校から帰国し、四国全域でクラスを 持っています。今日は駅まで送る道すがら彼と喫茶店でお茶を飲みながら、ひさびさにシュタイナーの理解やその展開についていろいろと語り合いました。
シュタイナーの思想をアントロポゾフィーといい、一般にはシュタイナー教育として知られています。
しかしそれは、その核となる思想・・アントロポゾフィーの結実した教育思想であって、根幹を成すのはやはりシュタイナーの神秘学的人間観とも言うべきものです。
この思想を研究し、世界にその活動基盤をおく組織はアントロポゾフィー協会(人智学協会)と呼ばれその活動中心は、スイスのバーゼル近郊のドルナッハにあるゲーテアヌムという本部です。ゲーテアヌムは、普遍アントロポゾフィー協会という組織の中心であると同時に「精神自由大学」という研究機関でも
あります。シュタイナーを学ぶ人は、何らかの形でこの機関を知ることになります。
Tさんは昨年夏に組織された四国でのアントロポゾフィーのための組織・・四国アントロポゾフィー・クライスの代表でもあります。
さてさて、シュタイナーに関心のある人は、現状表立った部分ではまるで目立たない層ではありますがわたしは、とても希望を持っています。
それは、現代という時代が個人に要請する「切実な問いかけ」に対して徹底して向かい合った思想家はシ ュタイナーをおいて、他にないと思うからです。
現代科学、医学、教育、芸術、農業、建築学、芸術学、運動芸術(オイリュトミー)などなどアントロポゾフィーという包括的な世界観のもとに個別の光を当てて、現代人が陥っている「危機と突破口」に深い示唆を与える研究を残して1925年にシュタイナーは世を去ります。日本では大正時代から昭和という頃のことです。しかし、その運動と思想はシュタイナーの死後も大地のまかれた種のように80数年にわたり世界中に広まり、それぞれの国々で独自の展開と結実を生み出し続けています。ドイツ文化から生まれた特殊な思想という人もいますが、それは誤解だろうと思います。何故ならば普遍的・・ということ
と・・人間的・ということが調和して発展してゆける基盤こそがアントロポゾフィーだからです。
シュタイナーは、西洋人・東洋人・先住民などの区別を立てず、ひたすら「人間の謎」を解き明かして、新しい時代に生きる人たちへの魂の指針を示しました。
そして、人間の謎とは、世界の謎であり、人間の歴史はこの二つの謎へのあくことのない問いかけであるととらえています。
それは、時に宗教となり、時には芸術となり、また科学となってメタモルフォーゼして、歴史を通じて成長する人間の叡智を形成してゆくと考えたのです。
シュタイナーのテキスト『自由の哲学』はそんな人間の謎と世界の謎の間に橋をかける試みとして書かれた現在も読まれ続けているアントロポゾフィーの核心を説く本です。わたし自身はまだまだ理解は浅く、日進月歩ですがいつかこの書の語る「自由」に向けて歩みを進めたいと願っています。
春先の冷え込む一日でしたが、なんだかシュタイナーの思想がもたらす「熱」に浮かされたような不思議な一日でした。